『数Ⅲ方式ガロアの理論』のガイドブック

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数Ⅲ方式ガロアの理論(その23)

 現在2019年12月6日14時04分である。

麻友「ガロア連投」

私「昨日は、時間の面白い話を書いていて、ガロアが余り進まなかった。今日は、もうちょっと進めよう」

結弦「でもさあ、まったく何言ってるか分からない話に付き合わされる身にもなってよ」

私「今日は、もうちょっと、解説してあげよう」

麻友「じゃあ、テキストのp.11 l.9 から」



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 {\Pi (a)}{\psi} とを、{x} に関する,{\Pi (x,a)}{\psi x} との周期と呼ぶ事にすると

{\Pi (a) =\sum \psi \times \varphi a}

が導かれる.

 このように,第三種の関数の周期は,いつも,第一種の関数と第二種の関数とで表わされる.

 ルジャンドルの定理

{\displaystyle E'F''-E''F'=\frac{\pi}{2} \sqrt{-1}}

と類比の定理も導ける.

 第三種の関数を定積分に帰着させるという,ヤコビ氏の最も素晴らしい発見は,楕円関数の場合を除いては、実現できない.

 積分関数と整数との乗法は,加法の場合のように,{n} 次方程式──項を簡約するために,積分に代入する値を根として持つ方程式──によって実行される.

 周期を {p} 個の等しい部分に分ける方程式は {p^{2n}  -1} 次だ.その群は,全部で {(p^{2n} -1)(p^{2n}-p) \cdots (p^{2n}-p^{2n-1})} 個の順列をを持つ.

  {n} 個の項の和を {p} 個の等しい部分に分ける方程式は、{p^{2n}} 次だ.それは累乗根で解ける.



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麻友「とりあえず、ここまで。新しく、ヤコビという人が、出てきたのよね。ちょっと調べたら、アーベルのライヴァルだったのね」

私「その通りだ。19世紀の初め、ガウスは楕円関数のアイディアを持っていたが、未完成だと思い、発表しなかった。アーベルは、楕円関数についての発見をしていたが、発表しようかどうしようか、迷っていた。そんなとき、ヤコビが、楕円関数についての論文を、発表。アーベルは、慌てて、それまでに得られていた結果を、論文として発表する。だが、アーベルの業績は、なかなか日の目を見ない。結局、故郷ノルウェーで、婚約者に看取られながら、労咳に倒れる。このときになって、あのガウスまでが、『アーベル氏の肖像画のようなものがあったら、手に入らないだろうか?』とまで言って、残念がったというのだから、皮肉なものである」

若菜「お父さん。なんで、そんなことまで、知ってるんですか?」

私「高木貞治の『近世数学史談』で、読んだんだよ」

高木貞治『近世数学史談』(岩波文庫

近世数学史談 (岩波文庫)

近世数学史談 (岩波文庫)


結弦「僕たちとじゃ、読んでる本が違うな」

私「いや、実はその本は、中退して帰ってきた後、読んだんだ。在学中は、歴史より最先端を目指していた」

麻友「この後の文章には、積分の記号が出てくるのよね。『宇宙の年齢を求める』や、『『数学』というゲーム(その13)』でのパイの超越性の証明で、太郎さんが使っているのは、見たけど、どういうものか、知らない」

私「やっぱり、『微分積分入門』復活させなきゃ、駄目かな」

若菜「復活させて欲しいです」

結弦「僕も」

私「わかった。いずれ、復活させる。だから、今日は、読み方のみ、教える。それで、いいか?」

若菜・結弦「はーい」

麻友「それでは、テキストp.11 下からl.3 より」



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 変換について.

 先ず,アーベルが最後の論文で使ったのと同じ論法で,次が証明される:積分の間に同じ関係が成立していて,二つの関数

{\displaystyle \int \varphi(x,X)dx, \int \psi (y,Y) dy,}

ただし後者の周期は {2n} ,が得られると,{y}{Y} とは,ただ一つの {n} 次方程式によって,{x}{X} との関数として表わされる.

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結弦「読み方は?」

私「これは、左の方のが、インテグラル ファイ エックス ラージエックス ディーエックス、

右の方のが、インテグラル プサイ ワイ ラージワイ ディーワイ

と、読むんだ」

若菜「あの、ニョロッと言うのは、インテグラルと、読むのですね」

私「そうだよ」

麻友「それでは、続けるわよ」



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 この事から,これ等の変換は二つの積分の間だけで,いつも成立するものと仮定できる.{y}{Y} との任意の有理関数をとると,明らかに

{\displaystyle \sum \int f(y,Y)dy = \int F(x,X) dx}

となるからだ.

 両辺の積分が、どちらも,同じ個数の周期を持たない場合には,この等式は明らかに簡約される.

 だから,どちらも同じ個数の周期を持つ積分だけを,比べればよい.

 このような二つの積分が持つ,無理性の最小次数については,一方が他方よりも大きくはなり得ない事が,証明される.

 それから,与えられた積分を他の積分──その第一の周期は元の周期を素数 {p} で割ったものとなり,その外の残りの {2n-1} 個の周期は元のままとなっている──へ,いつも変換できる事がわかる.

 だから,周期が両方とも同じな積分──したがって,一方の {n} 個の項が,他方の項によって, {n} 次のただ一つの方程式によって表わされ,その逆も成立するような積分──を比べる事だけが残っている.これについては,少しもわかっていない.



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麻友「ガロアの遺書の、数学の話は、ここまでなのよね」

結弦「決闘する理由になった、女の人のことなんかは、書いてないの?」

麻友「書かれてない。太郎さんだったら書くでしょうけど、自分の好きな女の人のことを、のろけるなんて、男らしい人のすることじゃないわ」

若菜「おっと、反撃。これまで、つまらない遺書ばかり読まされて、怒ってるんですね」

麻友「そうじゃないのよ。太郎さんって、こういう風に、私に辛く当たられるのも、気持ちが良いみたいなのよ」

若菜「え、マゾヒスト?」

麻友「サディストでありながら、マゾヒストなのよ。私に、プロの歌手では、無理だと、死刑宣告したかと思うと、私に振られる場面を描いたり。でも、人間って、両方あるのが普通なのかも知れないわね」

私「そうだよ。麻友さん良く分かってる。ガロアの遺書の、残りの部分は、次回にまわそう。これで、解散」


麻友「太郎さん。『女の人のところへ来たドラえもん』のブログに、怪しいコメントが、付いたわ。そっとしておいた方が、良いわよ」

私「そうか。気をつけるよ。バイバイ」

麻友「バイバイ」

 現在2019年12月6日20時33分である。おしまい。