現在2019年12月7日11時06分である。
麻友「ガロアの遺書を、一気に片付けるつもり?」
私「こういうのは、勢いで終わらせるのが、良いこともある」
若菜「本当は、ガロアは、一晩で、これ全部書いたのですものね」
結弦「論文も、一晩で書いたの?」
私「いや、論文は、以前書いたものが、アクセプトできない、として戻ってきたのが、手許にあった」
麻友「じゃあ、始めるわよ。テキスト p.12 下からl.9より」
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オーギュスト君,僕の研究は,これだけではないのだ──察してくれ.最近の思索は,超越的な解析へ曖昧の理論を応用する事に,向けられている.超越的な量や超越関数の間の関係が与えられたとき,この関係を保ちながら,どのような交換ができるのか,どのような量を与えられた量と置き換えられるのか──を前もって知る事が問題なのだ.そのためには,今までの知識では不十分だ.しかし,僕には時間がない.この広大な領域への僕の思索は,まだ十分には展開されていないのだ.
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麻友「一旦止めるわよ」
結弦「超越的、という言葉が、何度も出てくるね」
私「高校時代の私は、ああ、19世紀初頭に、ガロアは、超越数( や など)の、ことを、考えていたんだなあ、と感心した」
麻友「『僕には時間がない』という言葉、フランス語で、Je n'ai pas le temps. (ジュ・ネ・パ・ル・タン)と、書いているのよね」
若菜「どうして、知ってる?」
麻友「以前太郎さんが、『数Ⅲ方式ガロアの理論と現代論理学(その7)』で、引用した、この本で、調べたのよ」
アーベル/ガロア『楕円関数論』(朝倉書店)
私「おー、やる気ある!」
若菜「でも、明日死ぬことが分かっていて、自分の出した結果を、残そうとするなんて」
結弦「アルキメデスも、『この問題を解くまで、殺すのを待ってくれ』と言ったそうだし、そういう人でなければ、あんな業績は、残せないか」
麻友「じゃあ、フィナーレよ。テキスト p.12 下からl.1
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この手紙を 誌に発表してくれ.
自信のない命題を主張するという無茶も,これまで度々した.しかし,ここに書いたものは,一年程あたためて来たものだし,不完全な定理を発表しているのではないか,という疑いをかけられないように,細心の注意も払ってある.
ヤコビかガウスに公開質問状を出してくれ.これらの定理の真実性についてではなく,重要性について,彼等の意見を聞かせてくれるようにだ.
以上ゴタゴタと書いた事を判読して,それが役に立つと気づく人々が,きっと現われると思っている.
心から,君を胸に抱きしめつつ.
E.ガロア
1832年5月29日
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若菜「あーっ、ガロア、死んじゃう」
結弦「主人公が死んじゃうところから始まるなんて、映画『ガンジー』とか、映画『アラビアのロレンス』みたいだな」
麻友「2030年製のAIって、こんな古い映画、知ってるの?」
私「生まれた時から、ROMに焼かれてるのかな?」
結弦「AIというのは、ネットと接続されているんです。だから、昔のことでも、アクセスできるんです」
麻友「そうよね。人間を、超えてるわね」
若菜「さあ、遺書が終わって、ガロア理論に向けて、進軍ですね」
麻友「少し用意してあるわ。テキスト p.13 l.11から」
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数Ⅲ方式 ガロアの理論
佐々木 数学の事ばかりだね.ペラペラと訳してくれたけど,内容はわかってるの?
広田 正直言って,ヨコのものをヨコにしただけの所もある.というのはだな,第三の論文というのは,残ってない.書く時間が無かったらしい.ここに書いてある事の中にも,何の事か,専門の数学者にも,わからない事があるそうだ.
佐々木 専門の数学者にも?
広田 そうだ.最後の「曖昧の理論」については,憶測しか,されてない.
佐々木 ヘェー.本当に,アイマイの理論だね.
広田 第二の論文というのは,まとまってはいないが,断片がある.第一の論文は,チャントしている──これが,ガロアを不滅にした業績だ.
佐々木 どんな内容?
広田 与次郎は,たしか,高三だったな.
佐々木 なったばかりだよ.
広田 だったら,2次方程式の根の公式は知ってるな.
佐々木 中学生でも知ってるよ.2次方程式
の根は
だよ.
広田 根は,係数 の間の四則と平方根とを使って表わされてるな.3次や4次の場合にも,係数の間の四則と累乗根とを使って,根を表わす公式がある.16世紀の話だ.
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麻友「今日は、ここまで。最後に言っている、3次方程式や4次方程式は、フェローやフォンタナやカルダノ、そしてフェラリの話ね。相対性理論のブログの『相対論への招待(その6)』や『数学者はなぜ、数学が美しいというのか』という投稿で、話してくれた」
私「実は、この本には、そのカルダノの解法や、フェラリの解法が、丁寧に説明してある」
結弦「楽しみだね」
若菜「アーベルほど、ハンサムじゃない」
麻友「でも、太郎さんよりは、ハンサムよ」
私「そりゃー二十歳で死んでるのだもの、かなわない」
麻友「男の人は、年取って、気品が加わるものよ」
私「はいはい。じゃあ、今日は、解散」
麻友「太郎さん。このまま、このブログを続けていくと、最短で、何ヶ月で、ガロア終わる?」
私「何ヶ月? どう考えたって、3年は、かかるよ」
麻友「3年か。太郎さんの公約のうち、『人を生き返らせる』『医学機器』は、実現できるかどうか、私には、分からない。でも、このガロアだけは、実現できそうな気がするのよね。そして、多くの人に役に立つ。じゃあ、3年間、私、好きな男の人との結婚、待つわ。2022年のクリスマスまで、太郎さんの心の中の恋人でいてあげる。この条件は呑める?」
私「麻友さんに本当に、好きな人がいるのなら、ガロアなんて待ってないで、結婚しなよ。やりたいときにやらなきゃ、何にもならないよ」
麻友「そこまで、言わなくても」
私「麻友さんのファンの人達は、許してくれると思うよ」
麻友「本当に、許してくれるかしら?」
私「じゃあ、1回、誤報を、流してみたら?」
麻友「『渡辺麻友、結婚!』って?」
私「そう。周りがどう反応するかってね」
麻友「確かに、太郎さんのアイディアの泉は、涸れないわね」
私「上手くやれよ」
麻友「分かった。今日は、バイバイ」
私「バイバイ」
現在2019年12月7日14時10分である。おしまい。