『数Ⅲ方式ガロアの理論』のガイドブック

矢ヶ部巌『数Ⅲ方式ガロアの理論』(現代数学社)のガイドブックを作ることを目指します。ブログの先頭に戻るには、表題のロゴをクリックして下さい。

数Ⅲ方式ガロアの理論(その31)

 現在2020年8月16日14時20分である。

麻友「ガロアは、久しぶりね」

私「キラキラや、数学の専攻とか、問題とか、相対論のブログで、やってたからね」

若菜「3次方程式に、アタックしたところで、止まってました」

結弦「僕が、イジワルな質問を、したんだよな」


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 これでも,初めの計画に狂いはない.

小川 初めの方程式と同値だからですね.


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結弦「という本文に対して、次の様に言った」


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結弦「ちょっと、待って。『方程式が同値』って、どういうこと?」

麻友「イヤミねー。一番突いて欲しくなかったところを、突いてきたわね。太郎さんのNKのノートに、同値という記号 {\Longleftrightarrow} も、見つけたけど、『方程式が同値』というのが、どういうことなのか、分からないのよ。どうすればいいの?」

若菜「真か、偽かが、同じになるって、ことですよね。両方の方程式で」

麻友「真か偽か? じゃあ、答えが同じってこと?」

私「さすが特待生。燕返しだな。そういうことだよ。ここでは、両方の方程式の根が同じという意味だよ」


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(『数Ⅲ方式ガロアの理論(その30)』より)


麻友「そうなのよ。同値という、言葉の意味が分からなかった」

私「あのとき、麻友さんが、言ったように、両方の方程式の根が、同じ、という意味で、いいんだ」

麻友「でも、根がいくつも、あったら?」

私「一方の方程式の根が、すべて、もう一方の根になっている、という、意味だ」

麻友「でも、そんなの辞書にも、書いてない」

私「だから、ゼミをやる意味がある。そういう暗黙の了解を、繰り返し議論を重ねながら、共有していくんだ」

若菜「お母さんの、燕返しといい、お父さんの返答といい、あたかもここで、本当に、ゼミをやっているみたいです」



 昨日、マックで、ここまで書いた。スマホでは、プレビューが、見られないので、ここで、断念した。

 さて、今日(2020年8月17日)になって、続きを、始める。


 現在2020年8月17日5時15分である。

麻友「少し、復習した方が、良さそうね。テキストp.19の、最初から。


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  完全立方式への変形


小川 {a,b,c,d} が実数のとき,3次方程式

{ax^3+bx^2+cx+d=0~~(a \neq 0)}

{(x}の整式{)^3=}定数

という方程式に変形するのですね.

広田 そうだ.計算を見通しよくするために,{x^3} の係数を簡単にしておくのがよい.両辺を {a} で割った

{\displaystyle x^3+\frac{b}{a}x^2+\frac{c}{a}x+\frac{d}{a}=0}

という方程式を変形しよう.

 これでも,初めの計画に狂いはない.

小川 初めの方程式と同値だからですね.


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麻友「ここからね」

私「計算を見通しよくするために、{x^3} の係数、{a} で、割ったことを、記憶の片隅に、留めておいて」

若菜「どうなるんですか?」

私「テキストp.56,p.96,p.146 で、ここで、なぜこんなことをしたか、分かってくる」

結弦「伏線が張ってあるということ?」

私「そうだ」

麻友「始めるわよ」


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佐々木 問題の整式は {x}{1} 次式しかないよ.{2} 次以上だと,その {3} 乗は {6} 次以上だから.

小川 それで,{A,B} を実数として

{(Ax+B)^3=}定数

という形を目的にします.

{(Ax+B)^3=A^3x^3+3A^2Bx^2+3AB^2x+B^3}

{\displaystyle x^3+\frac{b}{a}x^2+\frac{c}{a}x+\frac{d}{a}}

との差が定数となるには,{x} を含む項が消えないといけませんね.


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結弦「ストップ。なぜ、

{(Ax+B)^3=A^3x^3+3A^2Bx^2+3AB^2x+B^3}

と、

{\displaystyle x^3+\frac{b}{a}x^2+\frac{c}{a}x+\frac{d}{a}}

との差を、考えなければ、いけないの?」

麻友「分からないのよ。これ」

若菜「ちょっと、ギャップがありますね。お父さん、どうすれば、いいのですか?」

私「1999年12月25日に、読んだときは、分からなかった。その後、2009年5月30日にも、読んだが、分からなかった。そして、麻友さんと会った後、2016年9月20日に、やっと分かった。今、麻友さんが分からなくても、恥ずかしくはない」

結弦「それで、どうしてなの?」

私「今、

{\displaystyle x^3+\frac{b}{a}x^2+\frac{c}{a}x+\frac{d}{a}}

という式を、

{(Ax+B)^3=}定数

という形に、変形したいのだろう。この式は、展開すると、

{(Ax+B)^3=A^3x^3+3A^2Bx^2+3AB^2x+B^3}

だ。だから、

{A^3x^3+3A^2Bx^2+3AB^2x+B^3}

と、

{\displaystyle x^3+\frac{b}{a}x^2+\frac{c}{a}x+\frac{d}{a}}

とで、

{\displaystyle A^3=1,~~3A^2B=\frac{b}{a},~~3AB^2=\frac{c}{a}}

が、成り立つということだ。定数は、ずれていても、右辺へ持って行ってしまうから、問題ない。結局、

{(Ax+B)^3=}定数

という形にするためには、

{\displaystyle x^3+\frac{b}{a}x^2+\frac{c}{a}x+\frac{d}{a}-(Ax+B)^3}

{\displaystyle =\biggl(1-A^3 \biggr)x^3+\biggl(\frac{b}{a}-3A^2B \biggr)x^2+\biggl(\frac{c}{a}-3AB^2 \biggr)x+\biggl(\frac{d}{a}-B^3 \biggr)}

で、{x} を含む項が、消えればよくて、

{\displaystyle A^3=1,~~3A^2B=\frac{b}{a},~~3AB^2=\frac{c}{a}}

となればいいのだろう。『差が定数』とは、このことだ」

結弦「お父さんが分かるまで、17年かかったなんて、とんでもない本だな」

私「だから、ガイドブック作ってる」

若菜「納得です」


麻友「じゃあ、続き、始めるわよ」



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佐々木 {x^3} の係数を比べて

{A^3=1,}

{A} は実数だから,{A=1} ときまる.

小川 {x^2} の係数を比べると

{\displaystyle \frac{b}{a}=3A^2B=3B}

から,{\displaystyle B=\frac{b}{3a}} ときまります.

 ですから,問題の整式は

{\displaystyle x+\frac{b}{3a}}

しかありませんね.

佐々木 でも、

{\displaystyle \biggl(x^3+\frac{b}{a}x^2+\frac{c}{a}x+\frac{d}{a} \biggr)-\biggl(x+\frac{b}{3a} \biggr)^3}

{\displaystyle =\biggl(x^3+\frac{b}{a}x^2+\frac{c}{a}x+\frac{d}{a} \biggr)-\biggl(x^3+\frac{b}{a} x^2 +\frac{b^2}{3a^2} x+\frac{b^3}{27a^3} \biggr)}

{\displaystyle =\frac{3ac-b^2}{3a^2}x+\frac{27a^2d-b^3}{27a^3}}

となって,{3ac-b^2=0} という場合の外は,一般には定数にはならないよ.


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若菜「待って下さい。お母さん、本当に、その計算、したのですか?」

麻友「えへへ、真面目に、1から計算したわけでは、ないけど、テキストの式を、検算はしたわよ」

若菜「どういう風に?」

麻友「

{\displaystyle x^3+\frac{b}{a}x^2}

は、同じだから、いいわよね。

{\displaystyle \frac{c}{a}x-\frac{b^2}{3a^2} x}

は、通分するために、第1項の分子分母に、{3a} をかけて、

{\displaystyle \frac{3ac}{3a^2}x-\frac{b^2}{3a^2} x}

だから、引き算して、

{\displaystyle \frac{3ac-b^2}{3a^2}x}

となるから、検算できた」

結弦「そうすると、

{\displaystyle \frac{d}{a}-\frac{b^3}{27a^3}}

も、通分して、

{\displaystyle \frac{27a^2d}{27a^3}-\frac{b^3}{27a^3}}

引き算して、

{\displaystyle \frac{27a^2d-b^3}{27a^3}}

と、求めたわけか」

麻友「はっきり言って、これは、しんどい」

私「実は、高校時代は、私も、こんな1つ1つの計算は、やらなかった。研究ノートなんて、作ってなかったからね」

若菜「じゃあ、お父さんも、テキストを、信じてたの?」

私「本に誤植というものがある、というのを知ったのは、大学に入ってからだ」

麻友「計算を追ってなくても、第18章のルフィニの証明まで、高校2年で分かったって、どうしてなの?」

私「高校2年の頃、私は、どこへ行くのでも、この本を、持って行っていた。当時は、買ったときに被せてくれた、丸善の紙のカバーを被せたまま、広島の市内電車に乗っているときも、JRの山陽線(広島の人は、汽車という)で、広島駅へ向かうときも、芸備線で、三次の父に会いに行くときも、いっつも、読んでいた。だから、ほとんど暗記していたような、ものだったのだ。それで、ルフィニの証明の、イメージが、つかめたのだ」

結弦「でも、アーベルの証明は、理解していない」

私「アーベルの証明は、ルフィニのやり残した、非常にやっかいな計算を、やり遂げなくては、ならない。高校2年のときは、無理だった」

麻友「今日は、これで、お開きにしない? 私、疲れたわ」

私「じゃあ、解散」

 現在2020年8月17日12時35分である。おしまい。