『数Ⅲ方式ガロアの理論』のガイドブック

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数Ⅲ方式ガロアの理論(その35)

 現在2021年1月7日19時19分である。(この投稿は、ほぼ5144文字)

私「2日間、申し訳なかった。再開する」

麻友「いいかしら?」

若菜「大丈夫です」

結弦「僕も」

麻友「じゃあ、テキスト21ページ下から5行目」


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広田 この問題とは逆に,{2} 次方程式

{x^2-5x+6=0}

は、根と係数との関係から,すぐに解けるだろう.

佐々木 和が {5},積が {6} となる二つの数,{2}{3} だ.

広田 それは,連立方程式

{\left\{
\begin{array}{l}
\displaystyle
u+v=5\\
uv=6
\end{array}
\right.
}

を解く事だ.

小川 そうか.初めの {2} 次方程式を解く事は

{\left\{
\begin{array}{l}
\displaystyle
u+v=-\frac{b}{a}\\
\displaystyle
uv=\frac{c}{a}
\end{array}
\right.
}

という連立方程式を解く事に帰着されるのですね.

広田 この連立方程式が最初の {2} 次方程式よりも簡単に解ける場合──たとえば,見ただけで解ける時──だけしか有効ではないのだがね.

佐々木 このアイデア{3} 次方程式に応用するんだね.


             連立方程式への変形


小川 {3} 次方程式

{y^3+py+q=0}

の三根を {\alpha,\beta,\gamma} とすると

{\left\{
\begin{array}{l}
\displaystyle
\alpha + \beta + \gamma=0\\
\alpha \beta +\beta \gamma +\gamma \alpha =p\\
\alpha \beta \gamma =-q
\end{array}
\right.
}

ですね.



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結弦「ストップ、ストップ。なんで、小川君、高校3年生なのに、{3} 次方程式の根と係数の関係なんて、知ってるの?」

麻友「私も、いきなり {3} 次?って、思ったんだけど、{3} 次方程式の解き方自体は、高校で教えないけど、根と係数の関係(もしくは、解と係数の関係)だけは、高校数学Ⅱ・Bで、教えているみたいなの」

若菜「私は、2042年7月に、14歳で、過去の2018年から来た、お父さんとお母さんに、2018年の世界へ連れてきてもらった。だから、2018年に、中学2年生で、14歳だった。混乱を減らすために、誕生日は仮に6月30日とし、2021年1月7日の今日には、16歳になっていて、高校1年生。今年4月から、高校2年生です。7月にはこの世界で、3年過ごしたことに、なります」

結弦「僕は、2030年生まれで、2042年7月に、12歳だった。2年半経ったから、14歳で、中学2年生の生徒」

私「お前たちも、成長しているんだなあ」

麻友「子供の成長は、速いわね」

若菜「お父さん。この世界を、『数学は冒険』という世界にするんだ、と、言ってましたよね。ちゃんと、高校で、どんな風に、数学が教えられているか、チェックしとかなきゃ、駄目ですよ」

結弦「 {3} 次方程式の根と係数の関係だって、ネットでちょっとググれば、出て来ちゃう世の中なんだけど、{3} 次方程式

{y^3+py+q=0}

{3} 根を、{\alpha,\beta,\gamma} として、・・・」

若菜「 {\gamma} というのは?」

結弦「ギリシャ文字の、ガンマ の、小文字ね」

結弦「そうすると、方程式は、

{(y-\alpha )(y-\beta )(y-\gamma )=0}

と、因数分解されるはずだから、これを展開すると、

{y^3-(\alpha+\beta+\gamma ) y^2+(\alpha \beta +\beta \gamma +\gamma \alpha )y-\alpha \beta \gamma =0}

となる」

若菜「それが、早すぎね」

結弦「まず、{y^3} は、いいでしょ。次に、{y^2} の係数は、{\alpha} と、{y} を、{2} 個掛けたもの、{\beta} と、{y} を、{2} 個掛けたもの、{\gamma} と、{y} を、{2} 個掛けたもの、の{3} つだから、{(\alpha+\beta+\gamma ) y^2} となって、{1} 個ずつマイナスが、あるから、{-(\alpha+\beta+\gamma ) y^2} となる。ここまでを書くと、

{y^3-(\alpha+\beta+\gamma ) y^2}

さらに、{y} の係数は、{\alpha} と、{\beta} とを掛けて、{y} を、掛けたもの、{\beta}{\gamma} と、{y} を掛けたもの、{\gamma} と、{\alpha} と、{y} を掛けたものになる。{\alpha} と、{\gamma} と、言わず、{\gamma} と、{\alpha} と、並べるのは、数学での美的センスで、係数がグルグル回っているときは、それにしたがった方が、綺麗だし間違いにくいからだ。それで、結局、

{(\alpha \beta +\beta \gamma +\gamma \alpha )y}

まで来て、

{y^3-(\alpha+\beta+\gamma ) y^2+(\alpha \beta +\beta \gamma +\gamma \alpha )y}

となって、最後は、定数項が、{(-\alpha )(-\beta )( -\gamma)=-\alpha \beta \gamma} と、なるのは、分かるね。これで、{3} 次方程式の根と係数の関係を、証明した」

若菜「意地の悪い質問だけど、係数比較できたのは?」

結弦「あっ、そうか。でもー、あっそう。お父さんがやったように、まず、{y=0} として、定数項を比較して、次に、{y=1} として、更に、{y=2} としたりして、包囲網を狭めて行けばいいんじゃない?」

私「やってみせると、

{x^3+ax^2+bx+c\\
=x^3-(\alpha+\beta+\gamma ) x^2+(\alpha \beta +\beta \gamma +\gamma \alpha )x-\alpha \beta \gamma =0}

で、{x=0} として、{c=-\alpha \beta \gamma}

{x=1} として、{1+a+b+c=1-(\alpha+\beta+\gamma ) +(\alpha \beta +\beta \gamma +\gamma \alpha )+c =0}

 {c} を両辺から消去して、

{1+a+b=1-(\alpha+\beta+\gamma ) +(\alpha \beta +\beta \gamma +\gamma \alpha ) } (式1)


{x^3+ax^2+bx+c\\

=x^3-(\alpha+\beta+\gamma ) x^2+(\alpha \beta +\beta \gamma +\gamma \alpha )x-\alpha \beta \gamma =0}

で、{x=-1} として、

{-1+a-b+c\\

=-1-(\alpha+\beta+\gamma ) -(\alpha \beta +\beta \gamma +\gamma \alpha )-\alpha \beta \gamma =0}

{c=-\alpha \beta \gamma} であったから、{-1} と共に消し、

{a-b=-(\alpha+\beta+\gamma ) -(\alpha \beta +\beta \gamma +\gamma \alpha ) } (式2)

(式1)より、

{1+a+b=1-(\alpha+\beta+\gamma ) +(\alpha \beta +\beta \gamma +\gamma \alpha ) }

であり、両辺から、{1} を引き算して、

{a+b=-(\alpha+\beta+\gamma ) +(\alpha \beta +\beta \gamma +\gamma \alpha ) }

(式2)が、

{a-b=-(\alpha+\beta+\gamma ) -(\alpha \beta +\beta \gamma +\gamma \alpha ) }

であるから、辺ぺん加えて、

{2a=-2(\alpha+\beta+\gamma ) }

辺ぺん引き算して、

{2b=2(\alpha \beta +\beta \gamma +\gamma \alpha )}

 よって、{a=-(\alpha+\beta+\gamma ) } かつ、{b=(\alpha \beta +\beta \gamma +\gamma \alpha )} となり、{a} も、{b} も、{c} も、係数比較したものと同じになる」

結弦「お父さん。こうなるだろうじゃなくて、本当に計算してみるんだね」

私「これは、大学3回生のときの、上野さんのゼミで、チューターとして付いてくれていた、先生が、数学の本を読むとき、『この本は、誤植がないから、つまらない。誤植つぶしが楽しみなのに』と言ったのと、4回生で、天体核のゼミで、チューターとして付いてくれていた先生が、『本の添え字の1つ、1つなんて、信じちゃ駄目だよ。全部確認した本が1冊できると、安心できるね。そのうち、ノートができてくるけどね』と、言ってくださったのが、私を学者にしてくれたのだと、今でも感謝している」

麻友「3回生で、数学を、4回生で、物理学を専攻したというのは、本当なのね」

私「21行しか進まなかったな。でも、量より質を重んじるからな」

若菜「お父さん。この本は、本当に丁寧に読んでいるのですね。ボロボロになっているわけですね。『数学基礎概説』『数Ⅲ方式ガロアの理論』を、愛読書、ナンバー1とナンバー2としたら、どうですか?」

結弦「ただそれだと、物理学の本が、なくなっちゃうんだよな」

私「物理学の本で、そこまでできる本を、探している」

麻友「じゃあ、明日は、もう少し頑張ってね」

私「分かった。それにしても、インターネットを使えるというのは、数学の冒険でも、今まで以上に面白くなるな」

若菜「その意気です」

結弦「パイの剣や、無敵のサーベルや、無料のパスポートとか、武器をいくつも、持っているんだからさあ」

麻友「じゃ、おやすみ」

若菜・結弦「おやすみなさーい」

私「おやすみ」

 現在2021年1月7日23時34分である。おしまい。