『数Ⅲ方式ガロアの理論』のガイドブック

矢ヶ部巌『数Ⅲ方式ガロアの理論』(現代数学社)のガイドブックを作ることを目指します。ブログの先頭に戻るには、表題のロゴをクリックして下さい。

数Ⅲ方式ガロアの理論(その70)

 現在2023年6月14日10時46分である。(この投稿は、ほぼ4972文字)

麻友「今日は、水曜日なのに、ヤクルトレディだったのね」

私「いつも、木曜日だったのだけど、段々遅くなって、12時過ぎになってしまったので、曜日を変えてもらったんだ」

若菜「昨日のガロア、誰も、突っ込まなかったですけど、


*******************************

佐々木 これから

{\left\{
\begin{array}{r}
\displaystyle
u=\sqrt [ \displaystyle 3 ] {-\frac{q}{2} + \sqrt{\biggl(\frac{q}{2}\biggr)^2+\biggl(\frac{p}{3} \biggr)^3}}\\
\displaystyle v=\sqrt [ \displaystyle 3 ] {-\frac{q}{2} - \sqrt{\biggl(\frac{q}{2}\biggr)^2+\biggl(\frac{p}{3} \biggr)^3}}
\end{array}
\right.
}

で,この積は明らかに {\displaystyle -\frac{p}{3}} だから,{3} 次方程式

{y^3+py+q=0}

の一つの根

{\displaystyle \sqrt [ \displaystyle 3 ] {-\frac{q}{2} + \sqrt{\biggl(\frac{q}{2}\biggr)^2+\biggl(\frac{p}{3} \biggr)^3}}+\sqrt [ \displaystyle 3 ] {-\frac{q}{2} - \sqrt{\biggl(\frac{q}{2}\biggr)^2+\biggl(\frac{p}{3} \biggr)^3}}}

が求まった.


*******************************
            (『数Ⅲ方式ガロアの理論』26,27ページ)


で、『積は明らかに {\displaystyle -\frac{p}{3}} だから』って、明らかなんですか?」

私「佐々木は、

{\displaystyle uv=\sqrt [ \displaystyle 3 ] {\displaystyle -\frac{q}{2} + \sqrt{ \biggl( \displaystyle \frac{q}{2}\biggr)^2+\biggl( \displaystyle \frac{p}{3} \biggr)^3}}

\times \sqrt [ \displaystyle 3 ] {\displaystyle -\frac{q}{2} - \sqrt{\biggl( \displaystyle \frac{q}{2} \biggr)^2+\biggl( \displaystyle \frac{p}{3} \biggr)^3}}\\

=\sqrt [ \displaystyle 3 ] {\biggl( \displaystyle -\frac{q}{2} \biggr)^2 -\biggl\{\biggl( \displaystyle \frac{q}{2} \biggr)^2+\biggl( \displaystyle \frac{p}{3} \biggr)^3 \biggr\}}\\

=\sqrt [ \displaystyle 3 ] {\biggl( \displaystyle -\frac{q}{2} \biggr)^2 -\biggl( \displaystyle \frac{q}{2} \biggr)^2-\biggl( \displaystyle \frac{p}{3} \biggr)^3 }

=\sqrt [ \displaystyle 3 ] {\displaystyle -\biggl(\frac{p}{3} \biggr)^3}= \displaystyle -\frac{p}{3}}

という計算をしている。高校生にとって、決して明らかではない。でも、例えば、ランダウとか、ブルバキでは、こんなのは、全部明らかとなってしまう。人間の論理が追い付ける、限界の速さで、文章が、進行する」

若菜「聞いて良かったです」

私「ただ、ここで、佐々木に先走らせたのは、叔父さん(つまり矢ヶ部さん)のたくらみがあったからだ」


麻友「じゃ、続きね」


*******************************


{y^3+py+q=0}

の一つの根

{\displaystyle \sqrt [ \displaystyle 3 ] {-\frac{q}{2} + \sqrt{\biggl(\frac{q}{2}\biggr)^2+\biggl(\frac{p}{3} \biggr)^3}}+\sqrt [ \displaystyle 3 ] {-\frac{q}{2} - \sqrt{\biggl(\frac{q}{2}\biggr)^2+\biggl(\frac{p}{3} \biggr)^3}}}

が求まった.

広田 その推論に疑問がある.

佐々木 どこ?

広田 3乗根の記号だよ.

佐々木 どうして.



   3乗根の記号

広田 3乗根の記号 {\sqrt [3] {~~}} をキヤスク使ってるが,それでイイノカという事だ.

佐々木 いいハズだよ.3乗して {A} になる数を {\sqrt [3] {A}} で表わすのだもの.

小川 もう少し精確にいうと,{A} が正のとき,3乗して {A} になる正の数がただ一つある.{A} が負のときも,3乗して {A} になる負の数がただ一つある.これらを {\sqrt [3] {A}} で表わす──です.

広田 それは {A} が実数のときだろう.

小川 アッ,そうか.2次方程式

{\displaystyle t^2+qt-\frac{p^3}{27}=0}

の判別式が負のとき,式で書くと

{\displaystyle q^2+\frac{4}{27}p^3<0}

のとき,この2次方程式の根は虚根だから

{\displaystyle \sqrt [ \displaystyle 3 ] {\displaystyle -\frac{q}{2} + \sqrt{ \biggl( \displaystyle \frac{q}{2}\biggr)^2+\biggl( \displaystyle \frac{p}{3} \biggr)^3}}}

{\sqrt [3] {~~}} の中は虚数ですね.

 {A}虚数のとき,記号 {\sqrt [3] {A}} の意味は──まだ,習っていません.

広田 形式的に記号 {\sqrt [3] {~~}} を使っても,内容がわからないのでは,しようがないだろう.

佐々木 {A}複素数だって,{\sqrt [3] {A}} は、3乗して,{A} になる複素数の意味だよ.

広田 {A} が実数のときは,小川君がいったように,3乗して {A} になる実数がただ一つある.ただ一つだから,3乗して {A} になる実数として記号 {\sqrt [3] {A}} の意味が確定する.

 {A}複素数のとき,3乗して {A} になる複素数は,ただ一つだろうか.


*******************************
            (『数Ⅲ方式ガロアの理論』27,28ページ)


麻友「ちょっと、この後、泥沼にはまるから、いったん切るわよ」

結弦「3乗根の記号の中が、虚数? どういうことに、なるの?」

私「これは、大学の数学の本にも、余り書かれていないんだけど、私は、富岡さんから、次の問題を出された。

富岡「

{\displaystyle \sqrt{\frac{b}{-a}}=\frac{\sqrt{b}}{\sqrt{-a}}}

ですね。そして、

{\displaystyle \sqrt{\frac{b}{-a}}=\sqrt{\frac{-b}{a}}}

ですね。そして、

{\displaystyle \sqrt{\frac{-b}{a}}=\frac{\sqrt{-b}}{\sqrt{a}}}

ですね。だから、

{\displaystyle \frac{\sqrt{-b}}{\sqrt{a}}=\frac{\sqrt{b}}{\sqrt{-a}}}

の、はずです。

 そうすると、左辺は、

{\displaystyle \frac{\sqrt{-b}}{\sqrt{a}}=\frac{\sqrt{b}~i}{\sqrt{a}}}

ですが、右辺は、

{\displaystyle \frac{\sqrt{b}}{\sqrt{-a}}=\frac{\sqrt{b}}{\sqrt{a}~i}=\frac{\sqrt{b}~i}{\sqrt{a}~i^2}=\frac{\sqrt{b}i}{\sqrt{a}(-1)}=-\frac{\sqrt{b}~i}{\sqrt{a}}}

となる。

{\displaystyle \frac{\sqrt{b}~i}{\sqrt{a}}=-\frac{\sqrt{b}~i}{\sqrt{a}}}

って、矛盾してません?」

麻友「矛盾してる」

私「私は、そんなに素直ではない。『調べてくる』と言って、帰ってきて、大学の複素解析の本など見てみたが、書かれてない。それで、『代数学辞典上・下』に向かって、上の問題番号466に、解があった。複素数の計算では、{\displaystyle \sqrt{-a}} とあったら、次々に、{\displaystyle \sqrt{a}~i} に置き換えなければならない」

若菜「そうすると、

{\displaystyle \sqrt{\frac{b}{-a}}=\frac{\sqrt{b}}{\sqrt{-a}}}

は、

{\displaystyle \sqrt{\frac{b}{-a}}=\sqrt{-\frac{b}{a}}=\sqrt{\frac{b}{a}}~i}

なのですね。一方、右辺は、

{\displaystyle \frac{\sqrt{b}}{\sqrt{-a}}=\frac{\sqrt{b}}{\sqrt{a}~i}=\frac{\sqrt{b}~i}{\sqrt{a}~i^2}=\frac{\sqrt{b}~i}{\sqrt{a}(-1)}=-\frac{\sqrt{b}~i}{\sqrt{a}}}

となる。そういう目で見返すと、富岡さんの最初の式自体、成り立たない」

結弦「高校で、最初に、複素数習ったとき、こんなことまで、習わなかった」

私「私も、習った覚えはない。だから、『数Ⅲ方式ガロアの理論』に書いてあることも、全部は分からなかった」

麻友「そっか。この後、ド・モアブルの定理とかいうものも、出てくる。証明は、どうするの?」

私「広島井口高校の数学の教科書には、載ってなかったと記憶している。私は、『代数学辞典上・下』で、乗り切った」


若菜「差し当たって、もう4900文字くらいに、なっています。一度投稿されては?」

私「それでは、解散」

 現在2023年6月14日14時02分である。おしまい。