現在2019年12月10日6時23分である。
麻友「随分、早い時間ね」
私「昨日、ちゃんと21時に、眠り薬飲んで、寝たから、比較的気分よく、起きられた」
麻友「太郎さん。この調子で、どんどんガロア進めない? もしガイドブックが3年後に完成したら、それは、太郎さんの勲章よ」
私「言うは易く行うは難し、だけど、しばらく頑張ってみよう」
若菜「お父さん。お母さんは、きっと3年後まで、待っていてくれますよ」
結弦「『ホーキング&エリス』のリベンジだな」
私「じゃあ、始めて」
麻友「テキスト p.16 l.7 から」
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29番44号は妙に細い通りの中程にある.古い家だ.格子戸を開けると,叔父さんが待っている.
目標
広田 ガロア理論の発端は3次方程式・4次方程式の解法だ.そこで,今日は,3次方程式の解法を調べよう.高校では教わらないだろう.
佐々木 出て来たよ.
広田 本当か.
佐々木 数Ⅰで.たとえば,3次方程式
定数項 の因数を,片っぱしから,左辺の に代入する. はダメだが, を代入すると になるから,左辺は を因数にもつ.
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結弦「ちょっと、ストップ。因数って、何? 素因数分解のこと?」
麻友「これ、調べたのよ。まず、整数の因数は、その整数の約数と、思って良い。ただし、ここでは、自然数ではなく、マイナスもあり得る整数を考えているから、 の因数は、 の 個」
若菜「整数でない場合は?」
麻友「整式の場合、例えば、 の場合、 や が、因数なのよ」
私「良く勉強してきたね」
麻友「高校の最初に習ったのを、なんとなく覚えていたの。これにも、ちょっとだけ、出てる」
- 作者:
- 出版社/メーカー: 学研教育出版
- 発売日: 2011/08/30
- メディア: 単行本
私「そうだね。実際この計算を、やってみた?」
麻友「この計算って?」
私「佐々木が、 はダメだが, を代入すると になる、と言ってる計算。本当に、 でダメなのかどうか、確かめた?」
麻友「本に書いてあること、信じちゃ駄目なの?」
私「麻友さんは、麻友さんの数学を築くんだよ。他の人が正しいと言ったから、では、自分の数学ではない」
麻友「太郎さん、そこまでやってるの? ちょっと、ノート見せてよ」
私のノート22ページ
読者注
とおく.
ダメ
OK
を因数に持つことは因数定理から.
定理(因数定理)
整式 が、 ならば、 を因数に持つ.
証明
を で割ったときの商を 、余りを とする.
を代入し、
より、 .
これより、
よって を因数に持つ。
証明終わり
注終わり
ノート終わり
麻友「因数定理って、あったわね。でも、ここで、証明付きで書けるなんて、半端でない」
若菜「 の場合なんですね。だから、 が、因数になる」
結弦「こりゃー、高校レヴェルの数学を、勉強しておかないと、置いて行かれるな」
麻友「じゃあ、少し先」
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ほかの因数を見つけるために で割る.割るといっても,多項式の割算なんてチャチな事はしない.高三だから組立除法を使う:
1 2 -5 -6 -1
-1 -1 6
________________
1 1 -6 0
から,商は で,問題の方程式は
と因数分解される.だから
と求まる.
チャンと習ってるよ.
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麻友「前回も話したけど、組立除法というものが、分からないのよ」
私「組立除法(くみたてじょほう)は、京都から戻ってきて、私の頭が壊れてしまったことを、実感した出来事のひとつだった」
麻友「相対性理論のブログで、『相対論への招待(その13)』と『相対論への招待(その14)』という投稿で、書いていたことね」
私「弟の数Ⅰの参考書では、具体的な例を見せながら、組立除法を、納得させるようになっていた。私は、整式の割り算や、赤ペンの記入などは、できないので、ノートをスキャンした。
麻友「実際に、今回の場合で、やってみてよ」
私「 を、 で割るのだから、 なら、右上に、 を書くのだから、プラスマイナス逆になって、 なら、 を右上に書く。係数を並べて、
1 2 -5 -6 -1
________________
となる。ここから、まず、先頭の1を、下に下ろす。
1 2 -5 -6 -1
________________
1
次に、1と、右上の-1をかけて、-1を2の下に書く。
1 2 -5 -6 -1
-1
________________
1
次は、2と-1を足し算して、1を下に書く
1 2 -5 -6 -1
-1
________________
1 1
次に1と右上の-1をかけて、-1を-5の下に、書く。
1 2 -5 -6 -1
-1 -1
________________
1 1
それから、-5と-1を足して-6を、下に書く。
1 2 -5 -6 -1
-1 -1
________________
1 1 -6
次に-6と右上の-1をかけて、6を-6の下に書く。
1 2 -5 -6 -1
-1 -1 6
________________
1 1 -6
最後に、-6と6を足して、0を下に書く。
1 2 -5 -6 -1
-1 -1 6
________________
1 1 -6 0
今回は、 が、 で割り切れたから、最後が0だが、割り算の余りがあれば、0のところに現れる。割り算の商は、 1 1 -6 より、 と、求まる。佐々木の計算と、合ってるね。この説明で、分かってもらえたかな? とにかく、1回は、手を動かさないと、分かるものも分からないよ」
若菜「お父さん、本当にお母さんのこと好きなんですねえ。手取り足取り説明してたもの。家庭教師でも、ここまで丁寧にしてくれませんよ」
結弦「というより、この組立除法という技が、この本の中で、何度も使われるから、絶対理解しておいて欲しかったんじゃないかな」
麻友「結弦、いい勘してる。あり得るわね。どうなの太郎さん」
私「実は、こんな整数じゃない、分数係数の整式の組立除法をこの本は、要求する。だから、超高校レヴェルの、組立除法をやるんだ。ただ、やり方は、全く同じなので、今マスターしておけば、苦労しない」
麻友「第29章まであるのに、第2章の出だしで、この難しさ。恐ろしいわね」
結弦「だからこそ、冒険だ」
若菜「最近、『ウソをつかない数学』というゲームの企画書が、進んでませんが」
私「最近の、ほとんど、アニメ『アナと雪の女王』のレヴェルの、リアルさの映像のゲームを知って、これを上回る数学のゲームなんて、どうやったら作れるんだろうってね。ある意味、萎縮しちゃったんだ」
麻友「太郎さん。いいことがあるわ。どうせ、世界中で楽しまれるゲームなんて、2,3年で、作れるわけないわ。だったら、このガロアの連載、本当に、書き続けなさいよ。太郎さんが、高校生でも楽しめる、数学の冒険をしているのが、少しずつ広まって、みんなの耳に入れば、『これを、ゲームにしましょう』という人も、きっと現れるわよ」
結弦「そうだよね。そうすれば、お父さんは、本当に、数学を冒険にした人になる」
私「じゃあ、ひとつ面白い話があるんだ」
若菜「なんですか?」
私「この本って、『少し進んだかなあ、と思っていると、『じゃあ、もう一度、2次方程式に戻って復習しよう』というのが、何回もあって、なかなかガロアが出てこない』と書いていた数学者がいて、私もその通りだと思う」
若菜「何回くらいあるんですか?」
結弦「もしかして、10回くらい?」
麻友「辛抱強い太郎さんが言ってるのよ。そんなもんじゃ、ないんでしょう。20回以上でしょう」
私「それを、4人で数えながら、読んで行こうよ。25回くらい、『反省しよう』『戻って考えよう』『これは、出て来たな』などと、どこまで戻って良いのか困る場面が、あるんだ」
若菜「それを、お父さんは、高校2年で、少なくとも、第18章まで、理解した」
私「でも、大学へ行って、嫌でも群論を勉強しなければならなくて、勉強したお陰で、この本の後半は、もうほとんど、分かっている」
麻友「太郎さんが、大学へ行けというのは、そういう強制的にでも勉強させられたことが、後で、役だったからなのね」
私「私の場合、解析力学(かいせきりきがく)などというものは、大学に入って半年くらい経つまで、存在すら知らないものだった。解析力学を知っただけでも、大学の理学部へ行って良かった」
若菜「お父さん、中退しても、残念に思ってないんですね」
私「望んでいた以上のものを、もらったからね」
結弦「僕たちも、この本から、望んでいた以上のものを、受け取ろう」
私「じゃあ、今日は、解散」
麻友「太郎さん。太郎さんも言っていたように、微分・積分に関しては、もの凄くたくさんの本がある。一方で、ブルバキは、量が多すぎる。『現代論理学』は、レビューなどを見ていると、同じ傾向の本が他にもありそう。『細胞の分子生物学』は、太郎さんの専門外。普通の人だったら、1冊片付けるのに、2年あれば十分。でも、太郎さんは、カメさんだから、3年あげるわ。2022年のクリスマスまでに、ガロアのガイドブック作って」
私「ガイドブック作っても、お金は、入ってこないよ」
麻友「私、結弦が、『ワインバーグは?』って、言ったの何かなと思って、後で調べたの
こういうページが、あるのね。しかも、言葉を追っていくと、この人、プロの物理学者じゃないみたいね。ページは、無料で閲覧できるから、ボランティアよね。
私、太郎さんに、お金を稼ぐことを、要求できないんだと、分かったわ。太郎さんより数段上の仕事をしていながら、お金をもらっていない人が、いるのですものね」
私「やっと、分かってくれたか。科学というのは、お金目当てでは、できない世界なんだよ。今のエンターテインメントの世界は、どれだけお金を儲けるかで、良い悪いが、評価されがちだから、麻友さんに理解できなかったとしても、無理ないけどね」
麻友「太郎さんの『数Ⅲ方式ガロアの理論』のガイドブックが、完成したら、何か、ご褒美をあげるわ」
私「期待しているよ。じゃあ、今日は、バイバイ」
麻友「バイバイ」
現在2019年12月10日13時34分である。おしまい。