『数Ⅲ方式ガロアの理論』のガイドブック

矢ヶ部巌『数Ⅲ方式ガロアの理論』(現代数学社)のガイドブックを作ることを目指します。ブログの先頭に戻るには、表題のロゴをクリックして下さい。

数Ⅲ方式ガロアの理論(その41)

 現在2021年11月14日14時47分である。(この投稿は、ほぼ6568文字)

麻友「最近、ガロアを進めようとしてるみたいね」

私「私、独自の、色を出そうと思ってるんだ」

若菜「あれっ、ちょっとお二人、いつもと口調が違いません?」

私「昨日(11月13日)の朝日新聞で、外国語の本を翻訳するとき、女言葉として、「わよ」とか、「だわ」を使わざるを得ない場合もあるが、現代の女の人は、そんな言葉は、使わない。というような記述があった。私も、麻友さんが、女の人だから、女言葉を使って当然と思ってきたが、『ケツがえぐれた』(笑)なんていう言葉を使う、女の人の言葉を、ちょっと顔を思い浮かべつつ、探ってみることにした。最初は、



麻友「最近、ガロアを進めようとしてるわね」

私「私、独自の、色を出そうと思ってるんだよ」



と、なってたんだ」

若菜「どこまで行かれるか、やってみよっ」


麻友「3次方程式が、出てきてから、急に難しくなった」

結弦「3次方程式を、2次の項がない式にするところまでは、分かったけど、その後、分からなくなった」

麻友「復習を兼ねて、24ページの下辺りから、辿ってみましょう」


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小川 適当な定数があるかどうか,方程式の左辺を展開してみます.この関係が出てくるように注意して変形します.

   {(u+v)^3=u^3+3u^2v+3uv^2+v^3}
        {=u^3+3uv(u+v)+v^3}

ですから

   {u^3+v^3+(3uv+p)(u+v)+q=0}

と変形されます.それで

   {3uv=-p}

という関係が考えられますね.

佐々木 これは使える.この関係から {v}{u} で表わすと

  {\displaystyle v=-\frac{p}{3u},}

これを,もとの方程式に代入して

  {\displaystyle u^3-\frac{p^3}{27u^3}+q=0}

つまり

  {\displaystyle (u^3)^2+qu^3-\frac{p^3}{27}=0}

となって,解ける方程式に導けるよ.大成功だ.

小川 チョッと,気になるナ.

佐々木 何が.

小川 {u} で割るところ.連立方程式

{\left\{
\begin{array}{l}
\displaystyle
u^3+v^3=-q\\
\displaystyle uv=-\frac{p}{3}
\end{array}
\right.
}

を解くわけだけど,この根は連立方程式

{\left\{
\begin{array}{l}
\displaystyle
u^3+v^3=-q\\
\displaystyle u^3v^3=-\frac{p^3}{27}
\end{array}
\right.
}

を満足するから,{u^3}{v^3} とは2次方程式

{\displaystyle t^2+qt-\frac{p^3}{27}=0}

の根でしょう.こう考えると,{u}{0} かどうかを気にしなくてもスムんだけど.

佐々木 どっちにしても,最後の2次方程式は同じ形だよ.


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                 (『数Ⅲ方式ガロアの理論』24~25ページ)

結弦「えっ、3次方程式が、解けたの?」

麻友「そうなのよ」

若菜「割り算したり、割り算しなくてスムとか、何言ってるか、良く分からないのですけど」


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私「ここのところの、説明が、不十分だったかも知れないな」

若菜「何度も、読んでいるうちに、少しずつ分かってきたけど、

  {\displaystyle v=-\frac{p}{3u},}

を使って、{v} を、消去しているのね」

結弦「ただ、その場合、{u=0} だと分母が、{0} になってしまう」

若菜「2次方程式の根と係数との関係を使えるように、

{u^3+v^3=-q}

に、合わせて、

{\displaystyle uv=-\frac{p}{3}}

を、3乗して、

{\left\{
\begin{array}{l}
\displaystyle
u^3+v^3=-q\\
\displaystyle u^3v^3=-\frac{p^3}{27}
\end{array}
\right.
}

という連立方程式を、作る。丁寧に書くと、{U=u^3,~V=v^3} と置いて、


{\left\{
\begin{array}{l}
\displaystyle
U+V=-q\\
\displaystyle UV=-\frac{p^3}{27}
\end{array}
\right.
}


としたということ。これは完全に、2次方程式の根と係数との関係に、なってる」

結弦「だから、この {U,V} は、2次方程式、

{\displaystyle t^2+qt-\frac{p^3}{27}=0}

の2根だというわけか。でも、本来の3次方程式の根が、まだ表せていない」

私「そうだった。前々回、結弦が悲鳴をあげたところまでは、これで、分かったとして、その先だな」

麻友「一応、テキストを、復習して、


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広田 今までの所をマトメてみよう.

佐々木 {3} 次方程式

   {y^3+py+q=0}

を解くには,{u,v} についての方程式

   {(u+v)^3+p(u+v)+q=0}

の一組の根を見つけるといい.

 そのような一組の根は,連立方程式

{\left\{ \begin{array}{l}
\displaystyle
u^3+v^3=-q\\
\displaystyle
uv=-\frac{p}{3}
\end{array}
\right.}

から求まる.

 この連立方程式の根の {3}{u^3}{v^3} とは,{2} 次方程式

{\displaystyle t^2+qt-\frac{p^3}{27}=0}

の二根である.


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結弦「付いて行かれない」

私「あと5行、頑張って」


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小川 逆に,この {2} 次方程式の二根となる {u^3}{v^3} との値で

{\displaystyle uv=-\frac{p}{3}}

となる {u}{v} との値の和 {u+v} は、{3} 次方程式

   {y^3+py+q=0}

の根となる──ですね.


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              (『数Ⅲ方式ガロアの理論』25~26ページ)


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という最後のところを、突破したかったのよね。太郎さんは」

結弦「どうして、

{\displaystyle uv=-\frac{p}{3}}

となる {u}{v} との値

と、言う必要が、あるの?」

私「中学生に、これは無理だよね。後で、広田さんが、説明するけど、例えば、

{u^3=27}

という方程式の根は、{3} だけじゃないんだ」

麻友「あっ、複素数解?」

若菜「{1} の3乗根 {\displaystyle \omega=\frac{-1+\sqrt{3}i}{2}} を、用いて、

{u=3,~3\omega ,~3\omega^2}

と、表される、3つの根を持つ。高校に入って出て来た複素数って、こんなところで、使うんだ」

私「若菜、なぜ、{1} の3乗根 {\displaystyle \omega=\frac{-1+\sqrt{3}i}{2}} を、知っていたか、説明して?」

若菜「あー、つまり、方程式 {x^3=1} ですよね。{1} を移項して、

{x^3-1=0}

で、

{(x-1)(x^2+x+1)=0}

と、因数分解できる。後ろの2次式の根を、2次方程式の一般解で、求めると、

{\displaystyle x=\frac{-1 \pm \sqrt{1-4}}{2}}

なんだけど、ルートの中が、マイナスだから、中学校では、この方程式は、解けません。と習う。でも、高校へ行くと、

{i=\sqrt{-1}} として、これを、虚数単位と言い、

{\displaystyle x=\frac{-1 \pm \sqrt{1-4}}{2}=\frac{-1 \pm \sqrt{-3}}{2}=\frac{-1 \pm \sqrt{3}\sqrt{-1}}{2}=\frac{-1 \pm \sqrt{3}i}{2}}

と言うように、解けるとする。

 お父さん。この虚数を使わないと、シュレーディンガー方程式は、解けないんですよね。量子力学は、複素数の科学だと、言ってましたね」

私「そうだ。数学として、興味本位で、虚数を研究しているのではなく、実際に物理学で、役に立っている」

結弦「それで、取り敢えず、{i=\sqrt{-1}} として、{1} の3乗根 {\displaystyle \omega=\frac{-1+\sqrt{3}i}{2}} だとすると、これが何だというの?」

私「まず、

{U=u^3,~V=v^3} と置いて、


{\left\{
\begin{array}{l}
\displaystyle
U+V=-q\\
\displaystyle UV=-\frac{p^3}{27}
\end{array}
\right.
}


だっただろう。ここで、{U,~V} が、求まったとしよう。例えば、{U=64,~V=2 \sqrt{2}} みたいに。

 その場合、{U=u^3,~V=v^3} だったのだから、{u^3=64,~v^3=2 \sqrt{2}} となるな」

結弦「分かった。この3次方程式の根は、

{u=4,~4 \omega,~4 \omega^2} と、{v=\sqrt{2},~\sqrt{2} \omega,~\sqrt{2} \omega^2}

と、3つずつあるんだ。それを、どう組み合わせても良いわけじゃ、ないんだ。そういうことでしょ」

麻友「あっ、そういうことだったんだ。分かってなかった。そうすると、


{\displaystyle uv=-\frac{p}{3}}

となる {u}{v} との値


と言ってるのは、例えば、{p=-12 \sqrt{2}} だったら、

{\displaystyle uv=-\frac{-12 \sqrt{2}}{3}=\frac{12 \sqrt{2}}{3}=4 \sqrt{2}}

だから、

{u=4,~v=\sqrt{2} \omega}

みたいな、選び方をしちゃ、駄目なんだ」

若菜「でも、

{u=4 \omega^2,~v=\sqrt{2} \omega}

なら、大丈夫そうですよ」

結弦「そうすると、

{u=4 \omega,~v=\sqrt{2} \omega^2}

も、いい」

麻友「もちろん、

{u=4,~v=\sqrt{2}}

は、いいわね」

私「やっと分かってきたようだな。この組み合わせるやり方の話は、広田さんが(もちろん矢ヶ部さんが)、この後で、もう一度やってくれる。そのときまで、ちょっと不安があっても、進んで欲しい」


麻友「かなり、念入りね」

私「この本は、分からなくても、取り敢えず進んでみる、ということを、やっていると、本当に何も分からなくなる。疑問点は、解消しておくに限るんだ」

若菜「ガイドブックなんだものね」

結弦「高校3年生を、目安にしてるの?」

私「この本自体が、数Ⅲ方式を、うたい文句にしているが、私としては、数学をこれから学ぶ人、学び直す人の、頼りがいのある座右の書になることを、目指している。その頼りがいがあるという、痒いところに手が届く説明として、ひとつ。若菜は、{1} の3乗根を、{\displaystyle \omega=\frac{-1+\sqrt{3}i}{2}} だと言った。でも、{x^3-1=0} を、因数分解して根を求めると、

{\displaystyle x=\frac{-1 \pm \sqrt{1-4}}{2}=\frac{-1 \pm \sqrt{-3}}{2}=\frac{-1 \pm \sqrt{3}\sqrt{-1}}{2}=\frac{-1 \pm \sqrt{3}i}{2}}

というように、{\pm} が、付いている。このマイナスの方は、考えなくて良いのだろうか? と、初心者は、思うだろう。計算してみると、実は、こうなるのだ。

{\omega} は、{x^2+x+1=0} の根なのだから、{\omega^2+\omega+1=0}

 したがって、

{\displaystyle \omega^2=-\omega-1=-\frac{-1 + \sqrt{3}i}{2}-1=\frac{1 - \sqrt{3}i}{2}-1 =\frac{-1 - \sqrt{3}i}{2}}

となって、{\pm} のマイナスの方は、{\omega^2} だったのである。疑う人は、ご自分で、確かめてみられると良い」

麻友「今日はとうとう、このブログでも複素数が、出てきたわね」

若菜「実際の現象って、実数で測定するのですよね。虚数を使わずに、物理学を作れないのですか?」

私「ガロア理論を追求していくと、分かってくる。実数だけでは無理」

結弦「まあ、中学3年生が、混じっていることを、覚えていてよね」

私「じゃあ、今日は、おしまい」

 現在2021年11月14日19時13分である。おしまい。