『数Ⅲ方式ガロアの理論』のガイドブック

矢ヶ部巌『数Ⅲ方式ガロアの理論』(現代数学社)のガイドブックを作ることを目指します。ブログの先頭に戻るには、表題のロゴをクリックして下さい。

数Ⅲ方式ガロアの理論(その25)

 現在2019年12月8日14時14分である。

麻友「やっと、本気になった」

私「読むに堪えないほど難しい本の、ガイドブックを作るというのは、十分意味のあることだ。3年で、やってみせよう」

若菜「お父さん、かっこいい」

結弦「さて、どこまで続きますか」

麻友「じゃあ、第1章の最後、始めるわよ。テキストp.14 l.8 から」



*******************************



佐々木 5次方程式は?

広田 それが問題だ.なかなか判らなかったが,とうとう19世紀になって,ルフィニという人と、アーベルとが解決した.5次以上の方程式には,こんな公式はない──というのだ.

佐々木 面白いね.

広田 一般的な公式はないが,具体的に係数を与えると,四則と累乗根とで表される場合がある.そこで,係数の間の四則と累乗根とを使って,根が表されるための必要十分条件を求めたのが,この第一論文なのだ.

 方程式を離れて,これを別の角度から見直したのが,デデキントという,これまた偉い数学者で──それが,現在,「ガロア理論」と呼ばれている数学の始まりだ.

 デデキントの「ガロア理論」の入り口までなら,シロウトながら,叔父さんも知っている.

佐々木 ホント.じゃ教えてくれよ.さっきから,知りたくてムズムズしてたんだ.

広田 今すぐ,というワケには行くものか,時間を掛けて,ユックリと話してあげよう.

佐々木 そんなにムズカシイのかい.アマチュアの叔父さんにも判るというのに.

広田 マトモにぶっつかるのでは,確かに難しい.しかし,叔父さんが勉強した方法でやれば,時間は掛かり,遠まわりだが、ヤサシイ.

佐々木 どんな風に勉強するの?

広田 歴史的に,一つずつ段階を追ってゆく.

佐々木 叔父さんお得意の方法だね.

広田 これだと,複素数と2次方程式と順列の知識とから出発できる.

佐々木 それじゃ,数Ⅰと数Ⅱで十分だね.数Ⅲ方式という訳だね.僕にも,できそうだね.

広田 無論,できる.この方法だと,一つの理論が出来上がるまでに,人類がどのように苦労したかという,過程までが理解される.生きた数学が味わえる.

佐々木 是非,話してくれよ.

広田 質問しながら,与次郎にも考えて貰いながら,話をしよう.

佐々木 なんだか,一人では心細いな.数学の好きな友達を連れて来てもいいかい.

広田 何という友達だい.

佐々木 小川三四郎

広田 三四郎でも四五郎でも,何人でも連れてこい.友,遠方ヨリ来タル,マタ,楽シカラズヤ──だ.

佐々木 遠方ヨリ,叔母さんが呼んでるよ.

広田 ホイキタ,また片付けものを始めるか.



*******************************


麻友「途中で、上手く切れなかったので、最後まで、進めちゃった」

若菜「『小川三四郎』って、・・・」

麻友「そう。

広田 萇(ひろた ちょう)先生

佐々木 与次郎(ささき よじろう)君

小川 三四郎(おがわ さんしろう)君


は、どれも、夏目漱石の小説『三四郎』の、登場人物。ただ、元の小説だと学生ふたりは、東京大学の学生となっている。彼等が、高校生だったとき、という空想の物語ね」

三四郎

三四郎

結弦「なんか、時間をかけて、ゆっくりやっていくから、高校3年生なら、大丈夫と、言ってるけど」

私「この、甘い言葉に引っ掛かって、私は、高校2年生のとき、2回通読しているが、5次方程式の代数的解法が不可能であることの、ルフィニによる証明までしか、理解できなかった」

麻友「太郎さんに取って、数学で、群というものを、認めるには、アーベル群という言葉の起源になっている、アーベル方程式というものを理解しなければ、ならないのよ。しかも、この本で」

若菜「どうして、そこまで、拘るのですか?」

私「それは、私が、いっとき、教育者を目指していたからでもある。ガロア理論の易しい本もあることはあるけれど、高校生の目線で書かれたものは、少ない」

結弦「あくまで、高校生の目線に、拘るのは、お父さんにとって、高校卒業レヴェルというのが、普通の人の数学のレヴェルと、思ってるからじゃないの? でも、普通の人、高校入学して、複素数が出てきた段階で、数学を、見限ってるんじゃないかな」

私「色々な見方はできるけど、『ウソをつかない数学』というゲームを作るには、この愛読書ナンバー3を、読破しておいた方が良いと思う」


若菜「ところで、デデキントという数学者によって、現在、ガロア理論と呼ばれるものができた、とありますが、この本のガロア理論は、現在のガロア理論ではないのですか?」

私「ガロアのアイディアが、できていく過程を、この本は、克明に追っている。だが、現在のガロア理論は、数ページで、扱っているに過ぎない。そうなのだが、この本を読んでいくと、大量の計算を、強いられる。それは、無駄なことのようだが、手計算でやれば、計算力が付き、計算機で計算すれば、コンピューターによる計算の力が付く。特に、大学1回生で習う、行列式の定義に現れる、置換(ちかん)というものに、慣れるには、最適の本だ」

若菜「お父さんが、数学が恋人って、いうの、なんか、分かってきました。生きた数学を、味わったからですね」

結弦「ところで、『友,遠方ヨリ来タル,マタ,楽シカラズヤ』というのは、漢文の訓読み?」

私「そう。孔子論語の中の言葉だ。今の時代、これだけ書けば、誰でもググれるね」

結弦「第2章以下は、どうなることやら」



麻友「ちょっと、読んだけど、組立除法というもの、知らないのよ。教えてね」

私「それは、大学から中退して帰ってきた後、自分で証明できなくなっていて、弟の参考書の説明を書き写したから、大丈夫だよ」

麻友「良かった。でも、太郎さん、そんなことまで、あったのね」

私「まあ、ほとんど、リセットされたようなものだったから」

若菜「その、リセットされた数学を、築き直した」

私「私の数学は、そういうものだ。じゃあ、解散」



麻友「今日は、開戦記念日。ガロア理論へ、本格的に、宣戦布告した日ね」

私「こういう風に、この本でゼミをやるのが、夢だったんだ」

麻友「どうして、今まで、やらなかったの?」

私「実は、この本で、一番難しいのは、第8章なんだ。ここを落城させるのに、30年以上かかった」

麻友「私達には、丁寧に説明してよ」

私「もちろん。ところで、AKB48の、二本柱の会。今年も、振り込むよ」

麻友「ありがとう。感謝してるわ」

私「じゃあ、バイバイ」

麻友「バイバイ」

 現在2019年12月8日17時09分である。おしまい。