『数Ⅲ方式ガロアの理論』のガイドブック

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数Ⅲ方式ガロアの理論(その57)

 現在2022年1月23日18時17分である。(この投稿は、ほぼ3012文字)

麻友「まだ、早い時間ね。作用が、本当に、最小になっているか、見せて欲しいわ」

私「あっ、本当に、最小になっている、というのは、見せられないよ。ただ、実際の自然の運動以外のときの例を、ひとつ計算して見せるだけだよ」

麻友「何でも、良いわよ。始めて」

私「まず、ラグランジアンが、

{\displaystyle L=T-U=\frac{1}{2}m(v_x^2+v_y^2)-mgy(t)}

だった。ここで、{v_x=1,v_y=-gx(t)} だから、作用は、

{\displaystyle S=\int_0^1Ldt=\int_0^1T-Udt}

{\displaystyle =\int_0^1 \biggl(\frac{1}{2}m(1^2+(-gx(t))^2)-mgy(t)\biggr)dt}

となる。{x=x(t)=t} だから、

{\displaystyle y(t)=-\frac{1}{2}gx(t)^2=-\frac{1}{2}gt^2}

で、

{\displaystyle S=\int_0^1 \biggl(\frac{1}{2}m(1^2+(-gt)^2)-mg\biggl(-\frac{1}{2}gt^2 \biggr)\biggr)dt}

となる」

麻友「なかなか、進まないわね」

私「丁寧に、変形しないとね。次に、

{\displaystyle S=\int_0^1 \biggl(\frac{1}{2}m(1+g^2t^2)+mg\biggl(\frac{1}{2}gt^2 \biggr)\biggr)dt}

{\displaystyle =\int_0^1 \biggl(\frac{1}{2}m(1+g^2t^2)+\frac{1}{2}mg(gt^2)\biggr)dt}

だね」

若菜「私達も、手伝います。

{\displaystyle S=\int_0^1 \biggl(\frac{1}{2}m(1+g^2t^2)+\frac{1}{2}mg^2t^2\biggr)dt}

{\displaystyle =\int_0^1 \frac{1}{2}m\biggl(1+g^2t^2+g^2t^2\biggr)dt}

ですね」

結弦「僕も、

{\displaystyle S=\frac{1}{2}m \int_0^1 1+2g^2t^2dt}

{\displaystyle =\frac{1}{2}m \biggl( \int_0^1 1 dt+ \int_0^1 2g^2t^2dt\biggr)}

{\displaystyle =\frac{1}{2}m \biggl( \int_0^1 1 dt+ 2g^2\int_0^1 t^2dt\biggr)}

この、{\displaystyle \int_0^1 1 dt} は、どうすれば、いいの?」

私「それこそ、定積分を、計算しなければ、ならない。微分して、{1} になるのは?」

結弦「えーと」

若菜「この場合、{t} ですね」

結弦「あっ、それと、{t+C} も」

私「そうだな。そしてこの場合、

{\displaystyle \int_0^1 1 dt=[t]_0^1 =1-0=1}

と、計算する。これが、定積分の計算だ」

麻友「ふーん。そうやるんだ。だとすると、{t^2} の方は、

{\displaystyle \int_0^1t^2 dt=\biggl[\frac{1}{3}t^3 \biggr]_0^1=\frac{1}{3}-0=\frac{1}{3}}

となるのね」

私「さすが、特待生。みんなのを合わせると」

若菜「はい。

{\displaystyle =\frac{1}{2}m \biggl( \int_0^1 1 dt+2g^2\int_0^1 t^2dt \biggr)}

{\displaystyle =\frac{1}{2}m \biggl( 1+2g^2 \times \frac{1}{3}\biggr)}

{\displaystyle =\frac{1}{2}m \biggl( 1+\frac{2}{3}g^2 \biggr)}

となります。これで、おしまいだと思います」

私「その通りだ。これが、放物線の場合の、作用だ」

麻友「これ以外の経路を通ると、これより大きくなるのよね」

私「そう。このことを、式として、

{\displaystyle \delta \int L dt=0}(デルタ、インテグラル、エル、ディーティー、イコール、ゼロ)

と、書いたりする。なんか、あまり厳密ではない議論をしているようだが、現代の物理学では、この方法に頼ることが多い」


麻友「太郎さんは、ここまでノートを、書いた後、こう書き始めた」


『研究ノート2』69ページ


 極端な場合、重力がない場合、{g=0} (重力加速度がゼロ)のとき、

{\displaystyle S=\frac{1}{2}m \biggl( 1+\frac{2}{3}g^2 \biggr)=\frac{1}{2}m}

だが、{g=0} だから、{v_x=1,v_y=-gx(t)=0} となる。{y} 軸方向に、動かず、{x} 軸方向への、等速運動となる。すなわち、力が働いていなければ、物体は等速直線運動をする。つまり、ニュートンの運動の第一法則である、慣性の法則を、変分原理は中に含んでいるのである。



結弦「最後のどんでん返しって、これ?」

麻友「この後よ」



要するに、ラグランジアンで測った長さが、この世界の本当の距離なんだね。

      」2022.1.19 17:32:37



結弦「ラグランジアンで、測った長さって?」

若菜「えっ、長さは、物差しでなく、ラグランジアンで、測れって?」

麻友「慣性の法則が、出てくるとは、思わなかった。でも、それだけでなく、この世界での本当の長さの測り方は、ラグランジアンに、位置と速さを入れて、測るべきなのだ。物体は、そうやって測った世界の、最短距離を行く。だから、運動の第二法則である、{F=ma} は、本当は、第一法則に、含まれている。太郎さんが、ランダウの変分原理があれば、後、ファインマンの原子仮説と、大江さんの『ある時間、待ってみるように』だけで、生きていけるというの、納得よね」

若菜「さすがに、それは、想像してなかった、どんでん返しですね」

私「今日は、ここまでで、終わりとしよう」

 現在2022年1月23日20時17分である。おしまい。